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芸能人ウェブサイトの制作を終えて

いわゆるIT業界への仕事ですと、関連企業とのお付き合いが主になりますが、ホームページ制作となると、それこそ色々な業種とのお付き合いになります。当方では、開業時からのお付き合いや流れで、芸能関連の先様とのお付き合いが、割合として多くあります。そういった先での仕事内容は、IT面と経営面をリンクさせたコンサルティングや、そこから更に踏み込んだサイト構築そのものになります。たまたま先般、芸能関連の仕事として依頼されていた、某女優さんの所属する芸能事務所のサイト構築が完了しました。その工程を振り返りながら、気を付けていた事などを書いてみます。

まず、商品を売る商業サイトの制作アプローチなどと根本的に制作アプローチが異なる点が、芸能事業では、ホームページやブログもひとつの顔として、その芸能活動に与える影響が大きいことです。他のウェブサイト制作に比べて、そのことを最も重視して取り組みます。

通常のホームページ制作企業の制作ポイントである、「デザインを考える」ことなどはプライオリティとして一番後回し、まずは事務所が・またはご本人が、どういったポジションで芸能活動を行っているのか・また今後、どういったポジションを目指していくのか・派生する事業展開はどうか、そういった事全てが、「芸能人ご本人」が最前面にあって、その人気やポジションへの影響が最重要視されるのが芸能事業であると認識して、とても特殊でデリケートであることを、肝に銘じて制作に取り組みます。

わかりやすく補足すると、とっかえひっかえ商品群を売るのとはわけが違い、芸能人は、たった一つのお名前と活動を世に知らしめる人気商売で、その方たった一人の人格評価が全てです。その評価は、色々な面での露出によって「評価・好感度」などの影響を受けます。配役しかり・メディアしかり・報道もまたしかり。ウェブサイトもまた同様で、芸能人ご本人の評価を左右する一つの媒体になります。つまり、人格を表現しなければならないということです。

ホームページそのものが、芸能人の方の沽券にまで係わってくることもありますし、また、芸能のお仕事で派生するお付き合いになる、制作関係者・マスコミなども、またファンの方なども、ホームページを「その芸能人の一つの側面」として見る訳です。「人」が最も重視される・この面が、取り組むに当たって、とりわけデリケートでなくてはならない理由です。ホームページの場合は、特に「文章」が大切なのは、そこのオフィシャルページにどういった内容があるのか・エンターテインメント性はどうなのか?といった点に関しては、文章から情報を得ることが多いからです。

従って、自ずからコピーライティングの発想や文章力が要求されます。多くの場合、事務所側で用意されるのは宣材(宣伝材料)、パンフレット、オフィシャルな資料ですが、これらだけではホームページに掲載する情報として不足しているのが常です。そういった場合、告知・宣伝・アピール文の作成を、当方がコンサルティングや取材の段階で得た情報から、先で述べたような点に留意しながら・かつエンターテインメント性を更に補う形で、文章を用意して推敲を何度も行います、作業割合のかなりを、この作業に費やすことになります。

最終的には事務所とご本人のチェックを受けて文章を完了させるのですが、その際も、事務所が持っている計画や売り方・ご本人のご意向など、そういった面で直しが何度も入ります。芸能事務所のスタッフ皆さんは、メディアとのお付き合いや営業戦略などについて一流の方ばかりですので、当方が学ばせていただくことのほうがほとんどです。そのあたりのニュアンスや感覚を、だいぶ捉えられるようになってきましたけれども、それでも一つの人格・技能についての考え方や方針は、事務所によって・またご本人によって、100%異なっています。

デザインに関しては、例えばFlash(※雑誌ではありません)などによるコンテンツ制作を重視しようと言うお声があったりもしますが、ITという側面で考えた際に、何が最も適切なのか・そのあたりに関しては、当方から助言を行っています。こちらは、当方のノウハウ、実績&評価の積み重ねと納得性の高い資料やデータの提示などで、意見を容れて頂いています(※公開はワンチャンスのつもりで、隙の無い物を作ろう・と言う意識の重要さは、どのウェブサイト制作にも言えることですが)。

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上記諸々振り返ってみますと、「人」をプロデュースするウェブサイトの構築には、余分に時間と手間が掛かります。当方の作業割合や利益率などを考えると、決して芳しいとは言えないですけれども、難しい分だけ面白いとも言えますし、一つの制作に対して、能力・労力を発揮できるという点において、やりがいがあります。それでも、終わったときは、達成感よりも安堵感のほうを強く感じるのが常ですが…やはり、内容的にはしんどいですね。

付記1.
それでは、私が芸能界に詳しいかというと、テレビなどをぜんぜん見ないので、知らない方ばかりだったりします。まず始めに履歴や作品を拝見したり、情報集めをしていたり…。ただ、このようなフラットな心理のほうが、感情に振り回されず、余計な色気や考えを起こさないで制作出来るので、結果は良いように思っています。

付記2.
最近では、芸能人自身によるブログも多く公開され、また、意図不明な「社長の日記」ブログ(※常々、最強のエンタメとして読ませていただいています)などもあります。こういった「自身のブログ」に関して、「生身の人間がそのまま公開される」ということで発生する、良い点・そしてブログ炎上をはじめとする様々な問題について、いつか稿を改めて触れてみたいと思っています。

付記3.
今回、何回か取材にお伺いした際に、丁度女優さんご本人が脚本の読み合わせをなさっているところに遭遇したことがあります。脚本家の先生との間で、表現の仕方や演技の内容について、侃々諤々と激しく意見を交わしておられました。『プロというのは厳しいものだ…』と思いながら、そういう状況でしたので、当方がお邪魔にならないようにそーっと帰ろうとしたところ、瞬時にその厳しい感じと打って変わって穏やかに、お礼とご挨拶をなさってくれました。公の場でないにもかかわらず、感情に振り回されずに第三者に接したその態度に、人間としてのスケールの大きさと、人に対する思いやりなどが感じられ、今回の制作中の快事でありました。感情を切り替えて人に接する・態度に表さないということは、多くの人にはなかなかできるこっちゃありません。

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2007年11月05日 10:06に投稿されたエントリーのページです。

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